PS 100pieces 71-80☆71瞳閉じ 熱き此の背に ちから込め 伸べる羽先に 風梳かせ 急転直下 刃の葉先に 爪立ち 空を蹴り ふわりと彼の地に 降りるまで 「夕されば 門田の稲葉 おとづれて 蘆のまろ屋に 秋風ぞ吹く」2010.03.02 ☆72 今日も前へは飛ばないの 揃えた羽並を また濡らしたくないから 明日も先へは行かないの 温めた巣箱には まだあなたの匂いがしてるから 風つきまとい 誘い声 なぜわたしはすすむの? すすまねばならないの? 「音に聞く 高師の浜の あだ波は かけじや袖の 濡れもこそすれ」2010.09.11 ☆73 芽生えたばかりの この思い 繰り出す日々に 紛れぬよう 幾多のサインも 逃さぬよう 芯をとり 手のひらであたためて いまこそは 今こそは 「高砂の 尾上の桜 咲きにけり 外山の霞 立たずもあらなむ」2010.09.26 ☆74 漆黒の 闇夜にゆらり ゆらりと歩をすすめ 吹きすさぶ 風にふらり ふらりと足とられ その視線のかけら もし与えられたなら 膝がつき 頭垂れ 祈るかたちになる僕を 「憂かりける 人をはつせの 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを」2010.10.02 ☆75 待つなど訳もないことと 佇み瞬くうちに時は過ぎ 彼方の水底に沈みゆく 一片の彩を危うく掬い 掌にひらいてはみたけれど みたけれど 「契りおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり」2010.10.16 ☆76 あたたかい海の浅瀬に つつまれて 紅い耳には 汐が触れ 蒼い頬には 陽が刷かれ やがて 背に手に髪に 銀の沙 たしかに波に とかしたはずの 「わたの原 漕ぎ出でてみれば ひさかたの 雲居にまがふ 沖つ白波」2010.10.23 ☆77 眼に映る雑踏の 百年の末 モノと作り手の 煙くらべ 「触れた頬は 灼焔を含んで」 凍み夜に抱えた 久遠の記憶 「瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ」 ☆78 君の呼吸が聞こえる この枕辺で 僕の鼓動を合わせる 眠られぬまま そら翔けて くもを蹴り とりを越え はるかな影に 逸っていたときと いま 「淡路島 かよふ千鳥の なく声に 幾夜目ざめぬ 須磨の関守」2010.11.08 ☆79 幾たびも幾たびも 地を這い空に手を掲げ つかんだものは うねりとなって押し寄せる 足すくう流れに いつか身をまかせ いまは地を翔け空を舞い 「秋風に たなびく雲の 絶えまより もれ出づる月の 影のさやけさ」2010.11.19 ☆80 こころなど わからなくてよいと 重き髪 くろぐろと巻き絡められ 白々と肌を撫ぜる 陽をむかえ ねつはまだ この身に のこりしか 「長からむ 心も知らず 黒髪の みだれて今朝は ものをこそ思へ」2010.12.11 |